トドワラ春の乱~生きること・闘うこと - 幸せカメラ.net

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トドワラ春の乱~生きること・闘うこと

   

唐突ですが、この写真を見てどう思われますか?

NDS_3714-2

 

この瞬間を撮影した時、それはもう驚きましたよ、僕は。

こんな光景は初めて見ました。

えっ?そんなに珍しくない?

僕が驚いたのは、そこに餌もないのに、キタキツネがオジロワシに襲いかかったということです。

餌を奪い合うキタキツネとオジロワシの闘いは、自然界や冬のタンチョウの給餌場などで見かけることはあります。

でも、そこに何かがあるわけでもないのに、こうした闘いが起こることに僕はとても驚きました。

今までの僕のイメージでは、キツネとオジロワシのパワーバランスはこんな感じだったのですが・・・

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この時、オジロワシの足元には獲物がいました。

オジロワシ「重い・・・運べない」

キタキツネ「僕も行きたい・・・でも怖い」

カラス「カァカァ」

とまぁこんな感じのイメージでした。

実際この時のキツネの顔ったら・・・

NDS_0538

 

なんて大人しいのでしょうか。

そんなキタキツネが、上の写真のように勇ましく、空の王者に挑んだのですから、僕は本当に驚きました。

 

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この日、トドワラで朝を迎えた僕は、日の出から1時間ほど遊歩道を散策し、撮影に没頭していました。

その後、車に戻って今度は移動しながらオジロワシの姿を撮ろうと、海岸線を探しました。

するとすぐにオジロワシのカップルを見つけ、かなり良い位置で撮影することができたのです。

→前回記事:トドワラの遅い春~躍動する生き物たち

その後、場所を変えさっき飛び去ったカップルを再び見つけました。

 

今度はさっきよりも遠い位置から、驚かさないように気を遣って撮影していました。

そこには3羽ほどのオジロワシがいて、

「今日はオジロワシデーだな♪」

と喜んでいたのです。

NDS_3662

 

すると、赤く錆びた鉄の箱の近くで何かが動いているのが見えました。

ピントをオジロワシからそちらに合わせると・・・

「えっ?キタキツネ?」

なんとオジロワシの直ぐ側にキタキツネが静かに潜んでいたのです。

NDS_3644

 

まずその距離感に驚きました。

お互い、2~3mくらいの距離でしょうか。

キタキツネは動かずジッとしています。

オジロワシもそこには餌がないようで、動きません。

 

すると、キタキツネが箱の裏に回りこみました。

僕の視界からその姿が消え、どこかに行ってしまったのだと思いました。

次の瞬間、左側にいたオジロワシが突然飛び立ったのです。

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慌ててシャッターを切ると、そのすぐ下にキタキツネの姿がありました。

「えっ?何?もしかして威嚇したの?」

キタキツネは明らかにオジロワシに対してプレッシャーをかけているようでした。

そしてオジロワシが飛び立つとすぐにそのキツネは左側へ走って行き、漁具の置き場へ向かいました。

NDS_3670

すると、その奥にもう一匹のキタキツネの姿が見えました。

僕のいる位置はさっきからずっと変わっていないので、恐らくそのキツネもずっとそこにいたのだと思います。

「そこにいたのね、キミも」

と微笑みながら、すっかりキタキツネモードに入った僕は撮影を続けました。

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漁具の奥に寝転んでいるキツネは、よーく見るとほっぺに白い斑点が特徴的でした。

さきほどオジロワシにちょっかいを出したキツネがその側にやってきて、ピタッと寄り添うように座りました。

その雰囲気を見ると・・・

「カップルかぁ」

と素直にそう思いました。

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そして僕はこの可愛いカップルに名前を付けました。

こんもりとまだモフモフの毛並みでオジロワシに突っかかった先ほどのキツネを

マルフ」(丸くてフックラ)

奥で静かに休んでいる、ほっぺに白い斑点のあるキツネを

ハンテ」(白い斑点)と名付けました。

僕の中では「マルフがオス」で、「ハンテがメス」という設定です。

ハンテは表情を変えず、静かにこちらを見ていました。

マルフは一度もこちらを見ずに(写真を見ると先程は何度かこちらを見ていたようですが)ハンテに寄り添っているように見えました。

そして少しの間、2匹はそこで動かず、僕も撮影の手を休めようとファインダーから目を離しました。

すると、マルフが尻尾をピンと立てながら、左の方へ歩いて行きました。

NDS_3686

 

彼らの奥の方は海で、右も左も砂地の海岸線です。

マルフはどこへ向かったのか?

その姿はすぐに見えなくなりました。

ハンテは相変わらずこちらを静かに見ています。

そこで僕は彼らを追うのを諦めて、再びオジロワシを撮ろうとその場を後にしました。

 

車で少し走ると、またオジロワシのカップルを発見しました。
今度は背景がとてもすっきりとしていて、撮影するにはベストポジションでした。

車を少し離れたところに停めて、ゆっくりと近付きました。

「うーん、綺麗には撮れるけど、何か物足りないな」

と、すっかり贅沢になった僕は、撮る角度を変えようと少し移動しました。
すると、左の方から突然マルフが現れたのです!

NDS_3702
「また現れた!面白いな~この子は」

なんて思いながらマルフにピントを合わせました。

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オジロワシも心なしか緊張した様子でキョロキョロと様子を伺っています。

マルフはオジロワシの方を見ようとはしていませんでした。

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そしてマルフはどんどん近付き、さり気なくオジロワシたちの前を横切ろうとしたその時!
急に方向転換して、左のオジロワシに突進したのです!

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(モフモフの身体を揺らしながら猛然と襲いかかるマルフ)

僕はマルフにピントを合わせていたので、その珍しい光景の一部始終を撮ることができました。

右側のオジロワシは素早く空中へ避難しました。

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しかし左側のオジロワシはマルフに向かって威嚇するような仕草ですぐには飛び立ちませんでした。

「まさか、受けて立つ?」

それでもマルフはそのモフモフな身体を揺らしながら向かっていきます。

NDS_3708
その距離が一気に狭まり、左側のオジロワシもついに空中へジャンプ!

マルフはすぐ上にいるオジロワシに向かって威嚇しているようでした。

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そしてオジロワシもそこで滞空して、飛び去ろうとはしません。

そこに餌があったわけではないのに、です。

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そしてオジロワシは空中で縦方向に動き、マルフの様子を伺っていました。

マルフはやや警戒するような低い姿勢をとり、それでも視線を外しません。

オジロワシも飛び去ろうとはせず、ゆっくりと滞空していました。

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そして、数秒間その状態が続き、ついにその均衡は破れ、オジロワシはゆっくりと飛び去って行きました。

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マルフはそのままオジロワシの向かった方へ素早く消えていきました。

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すると今度は右の方からもう一匹のキタキツネが現れました。

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「ハンテ」です。

先程まで静かに佇んでいたハンテがここまでやってきたのです。

ハンテは盛り上がった海岸線の下を覗き込むように、真剣な眼差しで見つめていました。

次の瞬間、軽く鳴くような音を出し、海の方へと駆けて行きました。

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「一体彼らに何が起きているんだ・・・?」

すでに僕の視界から2匹のキタキツネの姿は見えなくなっていました。

 

ハンテはマルフがオジロワシと闘っているのを遠くから見て、駆けつけたのでしょうか?
僕が最初にマルフとハンテを見た場所から、今いる場所までは200mは離れていたと思います。

僕の記憶では彼らが闘っている間に、コレと言って鳴き声や音は聞こえなかったと思います。
(闘うと言っても正確には威嚇合戦ですが)

これはもしかして、発情期を迎えこれから子育てに入る彼らが、自らの縄張りを主張した行為だったのでしょうか?
たしかにこれから子供が生まれ、夏には小さな子ギツネたちがこの辺りで見られるようになります。
その時に、オジロワシがここにいると、子ギツネにとってはかなりの脅威になるでしょう。

もしかしたら、そういった子孫繁栄のために、キタキツネが行動を起こしたのかもしれません。
そして誰もいなくなった海岸から、再び移動して何かいないか探してみました。

 

すると今度はかなり低い高度でオジロワシが滑空してきたのです。

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これも結構珍しい光景でした。

ほぼ目線、しかも距離も結構近いという、嬉しいサプライズに再び撮影にチカラが入りました。

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一羽、また一羽と右から左へ滑空していきました。

「向こうには何があるんだろう?」

そう思いオジロワシが向かった方に急いで車で向かってみると、そこには沢山の鳥達が集まっていたのです。

オジロワシやカラスが多く見えました。

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砂浜には・・・恐らく魚か何かが打ち上がっていたようで、少し離れたところでは何かを一所懸命食べているオジロワシの姿が見えました。

そして砂浜では激しいバトルが繰り広げられていました。

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(画像編集でロープを消しています)

「圧巻」

翼を広げると2mにもなるオジロワシたちが、獲物を巡って激しくぶつかり合っていました。

その姿を見ていると、カラスはとても小さく見え、オジロワシのバトルには流石に入れないようでした。

 

同じ種族同士でもこうして生きるために闘っているのです、彼らは。

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そしてどこからかまた別のオジロワシがやってきてバトルに加わります。

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近くの電柱の上にもその光景を見下ろす鷲の姿が。

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少し離れた丘の上にも。

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まさに春のトドワラは「オジロワシ祭り

先ほどのキタキツネとの攻防の興奮も冷めぬまま、オジロワシの激しい闘いに目を奪われました。

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そしてどのタイミングだったかは忘れましたが、僕は撮影を止めてその場から立ち去りました。

車に戻る時、近くの電柱に留まるオジロワシを撮ってみると、流石に近すぎたのかすぐに嫌われてしまいました。

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その時、連写で撮っていたのですが、後から写真を確認すると、飛び去るオジロワシの尾羽根がフクロウのように見えて思わず嬉しくなりました。

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決してそのような写真を撮ろうと思ったわけではなく、偶然の産物なんですが、こうしたサプライズも野生動物撮影の魅力でもあります。

ここトドワラはこれから暖かくなり、オジロワシたちはもう直その姿を見せなくなります。

代わりに、キタキツネの子供たちが見れるようになるかもしれません。

この厳しい自然界では、彼ら野生動物は生きるために食べ、そして闘っていました。

僕はそんな逞しい彼らの姿を、写真を通して伝えることができたら嬉しく思います。

マルフとハンテ、また会おうね♪

おしまい

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■今回の撮影で使用した機材
ニコン D810 ボディ

ニコン D750 ボディ

ニコン AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR

タムロン SP 15-30mm F/2.8 Di VC USD ニコン用

ニコン AF-S NIKKOR 24-70mm f/2.8E ED VR


 - AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR, NIKON D810, トドワラ, 野生動物 , , ,