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キタキツネに会いたくなったらここにおいで

   

ピントが合わない

車から降りてカメラを構えた瞬間、僕はそう呟きました。

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最短撮影距離、2.2m

レンズ先端からカメラのセンサーまでの距離が2.2m以内だと、この超望遠レンズでピントを合わせることはできないのです。

「野生動物を離れたところから綺麗に撮りたい」と、僕はそう願い、このニコンD500と超望遠ズームレンズ200-500mmの組み合わせを選択したのです。

APS-C機の望遠効果もあり、望遠端の500mmは「750mm」相当の焦点距離・画角となります。

→関連記事:ニコンD500と街中を歩く~色々なレンズで試してきた

今まではフルサイズのD750やD810に超望遠レンズを装着し、遠くからでも何とか彼らの姿を一生懸命収めてきました。

「何とかしてあともう少しだけ近づけたら」

という夢を抱きつつ、です。

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それがD500を使うことで一気に「750mm」の世界を実現し、実際の距離自体は変わらなくても、僕の目に映る彼らの姿は一回り大きくなりました。

楽しい

そう素直に僕は喜びました。

以前より彼らを大きく、そして躍動的に撮れるようになり、撮影のイメージが広がっていくのを感じています。

キタキツネとの出会い

 

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この日の朝は、まだ暗いうちから行動して、景観の良い観光地などをチェックしながら心に響くような写真が撮れるかどうか考え、広い北海道を車で移動していました。

それにしても日の出の時間が早くなりましたね。

深夜に起きて出発しなければ、目的の場所から日の出を拝むことが難しい季節になってきました。

→関連記事:摩周から屈斜路湖へ~北海道の春散歩

そして、とある峠の下り坂の途中で、道路を歩くキタキツネを見かけたのです。

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僕は慎重に車を停めました。

その時間帯は交通量は極端に少ないのですが、観光名所に続くルートだったので、時間が来ると一気に交通量も増えるそんな道でした。

いつもならキタキツネは近くで車を停めると「逃げる」か、もしくは「止まってこちらの様子を見る」かのどちらかです。

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これは違うキツネですが、止まってこちらの様子を伺っているところです。 距離は30mは離れています。

その例外はほとんど見たことはありませんでした。

少なくてもこの日までは。

ただ、道路を歩くキタキツネを何枚も撮影しても、なかなか自分の心に響くような構図にはなりません。

なので、彼らの予期せぬ動きであったり、人間を警戒していない時の自然な表情を撮りたいと、いつもそう願っていました。

そしてこの朝も、超望遠レンズとD500の組み合わせで野生動物を撮ろうと考えていたのです。

野生動物と向き合うということ

 

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僕はキタキツネから離れたところに車を停めて、静かに降りました。

ここで彼が「逃げる」か「止まる」か、が勝負の分かれ道です。

逃げた場合はハッキリ言って良い写真は撮れません。

止まった場合はチャンスがあります。

キタキツネも好奇心を持って一定の距離を保ちこちらを観察することがあるからです。

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そうやって彼らと正対しながら、一瞬の表情をいつも狙っています。

そう言えば前に何度か数える程度ですが、目の前を素通りされたこともありました、彼らに(笑

キタキツネは目的がハッキリとしている場合は、完全に人間を無視、または恐れずに素通りすることがあります。

例えば「餌を巣に持ち帰る時」などがそうです。

以前、夏の花畑で偶然エゾシカと向き合う瞬間があったのですが、距離がかなり近くて、お互いかなり緊張していました。

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その時、鹿が僕から「フッ」と注意を逸らしたので、「何だ?」とその視線の方を見ると、キタキツネが僕達の目の前を歩いていたのです。

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しかも鹿と僕の間を歩く際、こちらには全く見向きもせずに素通りしていったのです。

その後はなぜだか鹿の緊張がとれて、僕は何枚も自然な表情を撮ることができました。

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稀にですが、鹿がそのように注意を向ける先には「熊」もいることがあるようなので、そういった事も忘れないようにしたいところです。

果たしてこの朝のキタキツネは、僕の姿を見て何を思ったのでしょうか?

向かってくる狐

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「えっ、ちょっ、待った!」笑

キタキツネは猛然と僕に向かってきました。

ほんの一瞬、「襲ってくるのか?」という不安もありましたが、撮影の手は止めませんでした。

表情が違いました。

警戒や怒りは感じなかったのです。

それにしたってピントが合わない。

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近すぎるんですよ、キツネが。

そして僕は笑ってしまって、本気の撮影をちょっと諦めました。

人から餌をもらったんだね

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恐らくこの観光道路で、このキツネは人から餌をもらったことがあるのでしょう。

人を全く恐れない、いや逆に餌をねだるような仕草で、僕との距離をどんどん詰めてきました。

エキノコックス症」というキタキツネを介した寄生虫の感染症は聞いたことがあると思います。

直接彼らの体に触らないことはもちろんですが、彼らのフンなどにも注意が必要です。

幸い彼と僕は接触するようなことはありませんでしたが、この様子を見ると人から「手渡し」で餌を食べたことがありそうな、そんな印象を受けました。

もちろん僕は餌を与えることはしません。

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大自然の中で力強く生きる彼らに、僕が餌を与える理由は一つもありませんから。

むしろ餌を与えることにより、野生で生きる力を奪ってしまうことにもなり兼ねませんから。

さて、キタキツネの「自然な表情」を撮ることができないこの嬉しい悲劇のような朝に、このあと僕はどうしたでしょうか?

まずは彼から逃げてみました(彼女?かもしれませんが)

逃げても付いてくる

一眼レフで動画を撮ってみました。


(字幕をONにして見ていただけたらと思います。音声は静かですが注意して下さい)

山などで熊に出会ったら「背中を見せて逃げてはいけない」と聞きます。

逃げると熊は「本能」で追いかけてしまうことがあるからだということです。

実際僕は熊と鉢合わせしたことはありませんが、彼らの生息域に入るときは熊撃退スプレーなどを持参しています。

「覚悟はしています、常に」

さて、キタキツネから離れて、せっかくだから近い距離で表情を撮りたかったのですが(可愛い顔をしていたので)、離れるとこちらに寄ってくるんですね。

離れても離れても追ってきます。

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それで一旦写真をやめて、カメラを動画モードにしました。

しかし、超望遠レンズをセットしていたので、最短撮影距離の2.2m以内に入ってきてしまうんです。

ピントが合わない」のはそれが原因です。

そこで超望遠での動画撮影も諦めて、車に戻りました。

標準ズームをセットしてあった「D810」に替えたのです。

標準ズームでキタキツネを撮る

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まさか広角側の24mmでキタキツネを撮る日が来るとは夢にも思っていませんでした。

僕がジッとしていると、彼もその場所で止まりました。

野生動物と正対した時、普通は人間が動くと「ビクッ」と条件反射のように彼らも動くのですが、この子はそれが鈍く、僕がしゃがんだり立ったりしてもほとんど動じませんでした。

しかものんびりとあくびや居眠りなんかをしているんですよね。

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それでたまに目を開けてこっちを見るんです、ちらちらと。

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「どんだけ人馴れしてるんだよ・・・」

と語りかけながら、この後どうするか考えました。

たしかこの時までは、ほんの数分間だったと思いますが、早朝だったので車も通らなかったのです。

 

するとその時、1台の車が峠を下ってきました。

それなりにスピードが出ていました。

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僕は道端に避けたのですが、その時の彼の表情を見ていると、やはり車に注目していました。

「そこから餌がもらえる」そんなイメージがあったのかもしれません。

車道での撮影は危険も伴いますので、少し森の中に入って、そこで自然な表情を撮りたいと、すでに不自然な感情が僕の中に芽生えていました。

そして僕は一人森の中へ入って行きました。

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キツネはこちらを見ています。

でも、10mくらい離れたのに、全くこちらに寄ってこないのです。

「おいで、道路は危ないから森の中においで」

僕は語りかけました。

ですがキタキツネはこちらをチラチラ見るものの、森のなかに入ってこようとはしませんでした。

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「人が森で、キツネが道路」

もしこの時車でここを通りかかると、そんな不思議な光景が見られたと思います(笑

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少し離れたところから彼を観察していると、やっぱりくつろいでいるように見えるんですね。

見たところ身体も健康そうだったし、それほどお腹が空いていた訳でもなかったようです。

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以前、子連れの母狐を見かけた時、かなり離れたところに車を停めて、そこから静かに歩いて様子を見に行ったことがありました。

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そしてさっき子供たちがいた藪の中を覗くと、思いっきり母狐と目が合ってしまったんです。

その時の距離は2mくらいでした。

すると母狐は怒った顔をして吠えました。

なんて吠えたと思います?

 

「コン!」じゃないですよ。

 

ワン!」でした!

びっくりしましたね~犬と同じでした。

調べてみると、キツネって「イヌ目」「イヌ科」なんですね。

母狐がワンと吠えると同時に、子狐たちは一瞬で藪の中に消えました。

「ごめんね、驚かせて」と同じく驚いた僕は心臓がバクバクしてましたよ。

北海道のキツネ事情

北海道ではこのように、道路脇で多くのキタキツネを見かけることがあります。

特に、秋から冬にかけてや、または深夜ですね。

いや、全シーズンそれなりに見かけますね、僕の場合は。

暗い時間帯に彼らが道路に飛び出してきて、車に轢かれたりする事故も少なくありません。

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少し前になりますが、この写真に写っている「三毛狐」なる存在も初めて見ました。

どうやら飼育されていた銀狐が逃げて野生化し、キタキツネとの交配でこのような毛色になっているようです。

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また、民家(農家)の近くでも普通にキタキツネが散歩したりしています。

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この時、偶然に写真を撮ったのですが、「フン」をしていましたね、民家のすぐ近くで。

やはり「エキノコックス」が心配になる要因です。

また、街の中でも普通にキタキツネを見かけます。

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ここ北海道では人と彼らの距離は、かなり近いと言えます。

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この時もすぐ近くで表情を撮ることが出来ました。 金網はエゾ鹿対策の「防護フェンス」です。 キタキツネにはその効果はありませんが、人間が通れないのを分かっているのか、しばし余裕の表情をしていました。

 

このように彼らはとても可愛い存在であるのと同時に、人との距離が近いことで感染症や交通事故など、お互いが望まない悲劇も発生しています。

北海道道東を車で巡っていると、道路脇に彼らの死骸を見ることも少なくありません。

話を戻すと、この日出会った「人を恐れないキツネ」の末路が僕は心配でなりません。

中にはワザと車の前に飛び出して、車を停めようとするキツネもいるくらいですから。

あの子がそんな風にならないように、森の中で餌を探して生き抜いて欲しいと思うのは、間違いじゃないと思っています。

だから野生動物には餌を与えないで欲しいのです。

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彼らは人から餌をもらうために生まれてきたわけではないのですから。

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こうした澄んだ眼差をしたキツネが、道路脇に潜んでいることを、どうか知ってもらえたらと思います。

今回はキタキツネについての記事でした。

「彼らに会いたくなったら、ここにきて見ていって下さい」

これからも彼らの姿をお届けしますので。

それでは長くなりましたが最後まで読んでいただきありがとうございました。

 

今回の撮影に使用した機材

ニコン D500 16-80VRレンズキット 《納期約1ヶ月》

ニコン AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR

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 - AF-S NIKKOR 200-500mm f/5.6E ED VR, NIKON D500, 野生動物 ,